資源選択性の統計解析

資源選択性とは?

生息場所(ハビタット)や食物は生物が生活や繁殖を営む上で不可欠な“資源”と見なせます。異なる種類の資源が同時に存在するとき,利用できる資源の割合と生物が実際に利用している資源の割合が異なっていれば,生物は選択的に資源を利用していると考えられます。こうした生物による資源利用の特性を統計的に明らかにするのが資源選択性の解析手法です。

 

複数種の資源に対する利用可能度と利用度を比較するためには結構複雑な手順きが必要で,データの非独立性や多重比較の問題を含みやすいので注意が必要です。

 

調査によって得られる利用度と利用可能度のデータは様々な形式を取ります。『利用』と『利用可能』をどのように定義するかが重要な判断のポイントであり,それによって解析手法も異なってきます。調査やデータ解析を通じて何を知りたいか,それを明確に意識することが重要な出発点です。

具体的には,以下のような統計手法が用いられます:

1. カイ2乗分布を用いる方法
 Neu法,Marcum法,WGGF法など
2. 順位を用いる方法
 Johnson法,Friedman検定法,Quade検定法
3. 対数比変換法
 Compositional Analysis (Aebischer法)
4. 距離を用いる方法
5. 選択性指標を用いる方法
 Manly法
6. 数理モデルを用いる方法

参考文献

詳しくは以下のレビュー論文をご参照ください。

清田雅史・岡村寛・米崎史郎・平松一彦. 2004. 資源選択性の統計解析-I. 基礎的な概念と計算方法. 哺乳類科学 44(2): 129-146.

https://doi.org/10.11238/mammalianscience.44.129

清田雅史・岡村寛・米崎史郎・平松一彦. 2005. 資源選択性の統計解析-II. 各種分析法の紹介. 哺乳類科学 45(1): 1-24. 
https://doi.org/10.11238/mammalianscience.45.1

そのほか下記の参考文献もあります。

清田雅史・高橋紀夫編. 2012.

日本哺乳類学会2011年度大会自由集会記録:サンプリングデザインとデータ解析~資源選択解析に挑戦しよう!哺乳類科学52(1): 110-113

https://doi.org/10.11238/mammalianscience.52.110

清田雅史. 2013. 移動軌跡のシミュレションデータを用いた資源選択関数の解説と評価. 哺乳類科学53(1): 1-15.

https://doi.org/10.11238/mammalianscience.53.1

資源選択性解析プログラム集

色々な手法を用いて資源選択性を解析するためのRプログラムとサンプルデータを水産資源研究所の岡村寛さんが制作されています。以前は水産研究・教育機構のWebページからダウンロードできたのですが,水研の機構改革に伴い現在アクセスできなくなっています。プログラムを使ってみたい方は清田までお問合せください。