ベルタランフィーの成長関数(VBGF)は魚類の成長を表す式としてよく使われます。他にもいろいろな関数が魚類の成長式として考案されていますが,それらは観測される年齢と体サイズの関係にフィットしそうな関数を適当に見繕ったad
hocなものです。これに対してVBGFは,『生物の反応や機能は物理的法則に沿ってモデル化できる』と主張する一般システム理論の一例として構築されており,理論的根拠を持つ唯一の成長関数と考えられています。このようなVBGFの理論的根拠と数学的導出を,データ解析の基礎知識(というか微積分の応用問題)として以下に示します。
まず,生物の時間あたりの体重変化 dw/dt は同化(エネルギー生産)と異化(エネルギー消費)の差に比例すると考えます。また同化は体表面積 S,異化は体重(バイオマス)w に比例すると考えます。エネルギー生産は植物の体表面積や動物の消化管面積に比例し,エネルギー消費は全細胞の重量に比例するイメージです。これを微分方程式として表すと次のようになります。
さらに,体表面積は体長の2乗,体重は体長の3乗に比例すると考えられます。すなわち,
初期条件 t = t0 のとき L = 0 を与えると,
となってVBGFが導出されます。
出生後の生物が相似形を保ちながら成長することを想定したモデルで,体が小さいほど体積あたりの体表面積が大きく,成長速度が速いことを表しています。微分式③が示すように,瞬間成長率dL/dtの最大値がKで,LがL∞に近づくにつれて成長が低下します。
参考資料
一般システム理論:その基礎・発展・応用.フォン・ベルタランフィ著(長野敬,太田邦昌訳),みすず書房.
新訂水産資源解析学.田中栄次著,成山堂.