鮮魚直売の目的

唐津での3日目はシケで水揚げは少なめでしたが,市場の競りで活魚を積極的に購入していた『唐津うまかもん市場』を見学しました。ここは農協が経営する農産物・水産物の直売所ですが,広い駐車場を備えた立派な施設です。平日の昼前ですがお客さんが沢山訪れていました。

鮮魚売り場には特に力が入っているようで,競り落とされたイシダイが泳ぐ活魚水槽を備え,購入した魚をおろしてくれる調理コーナーも充実しています。地産の新鮮で美味しい魚を手頃な価格で買えることが,この直売所の目玉になっているようでした。

ここは,市場の仲買人として競り落とした魚を売る場外売り場のようなもので,一般的な小売店よりも流通経路を一段階省略することで新鮮で比較的安価な魚が売られています。魚の地産地消や集客といった目的は達成されていますが,漁協や生産者が儲かる仕組みを作る直売所としての役割は果たしていないようです。

一方漁協独自の販売強化策として,佐賀市内や武雄市内の小売店に毎朝魚を運んで直売しており,学生1名が輸送車に同乗して状況を見学させてもらいました。この漁協直売で売られる魚は,アジ・サバ・イワシなどの青物が主体となっていましたが,それらはまき網漁業で漁獲され(漁協経営の市場ではない)隣接する別の市場で競売にかけられる魚を漁協が購入して販売するものでした。佐賀市内の消費者は,安価で毎日食べても飽きない青魚を好むので,そのマーケットの既存需要に応じた魚が直売されているそうですが,こちらも漁協の利益はあまり上がっていない印象でした。

 

単に直売するだけで生産者の利益が拡大するとは限らず,直売の仕組みを作ることで何を変えるのか,その目的を明確にすることが大切であると学びました。