美しい島の産業の持続可能性

高知県の西部にある柏島は,極めて透明度の高い美しい海に囲まれた秘境でしたが,トンネル開通によりアクセスが改善された現在では,マグロ養殖と宝石サンゴ漁とダイビングの島になっています。島の最も美しい入江一面にクロマグロとマダイ養殖種苗の筏が広がり,港の水面にはうっすらと脂が浮き生臭い匂いが漂います。

かつては夜明け前から餌やり作業が始まっていましたが,地元の自営漁業者が大手企業の傘下に納まった今では,仕事が始まるのは朝8時からです。クロマグロ用のイワシを船に積み込み,煙突状のパイプから勢いよく生簀に向かって発射していきます。その周りにはウミネコ,ウミウ,アオサギ,ハシブトカラスやハンドウなどが集まり,遅い朝食を食べていました。さらに生簀の周囲にはブリも寄って来て,それを釣って水揚げする形態の『一本釣り漁業』も定着しているそうです。

サラリーマン的な企業経営の養殖業には,島から離れた宿毛市などからも通勤可能になった反面,自営零細養殖業の人材難・経営難を加速させている面もあり,海の生態系にも人の社会システムにも変化を引き起こしているようです。また,イワシなどの小魚を大量に投入しながらマグロを生産するシステムや,中国へ高値で売るために成長が非常に遅い宝石サンゴをextractiveに消費するサンゴ漁,どちらも持続可能性が心配になります。