八幡浜のセリの競演

大分県別府市から八幡浜を経由して高知県の柏島を訪ねました。

別府からの深夜フェリーを使って早朝に着いた八幡浜魚市と直販所をまず見学しました。ここは今でも活発にセリが行われている貴重な魚市で,そのセリ方は独特です。同じ種類・サイズの魚が少量ずつ入ったケースが並んでいて,最も高い価格をつけた仲買さんが必要な数だけ購入し,残ったケースを二番目の価格をつけた仲買さんが買う方式です。仲買人が互いに価格を見せないようにするため,写真の白いジャンパーの人のように,着ている上着をヒラリとめくり,その下でこっそりセリ人に金額を示す『郷ひろみ』や『斎藤さん』風のジャケットプレーを行います。その数値が目に入らないよう他のセリ人がジャケットプレーの瞬間一斉にそっぽを向くのは,たいへん興味深い儀式的な光景です。この市場は見学通路も完備された近代的な施設ですので,機会があったら是非このユニークな競演をご観覧ください。

八幡浜から大月方面に向かう国道沿いにはあちこちに道の駅があり,魚や野菜,加工品などが直売されているのも特徴的でした。酢〆したキビナゴやヒメジでおからを巻いた『おから寿司』は,料亭に出してもおかしくない味と見栄えで,セリの光景とも相まって水産物の地産地消をめぐる伝統と文化が感じられました。