マダイ養殖の山と谷

佐賀玄海町の仮屋漁協へ話を聞きに行ってきました。ここは日本のマダイ養殖の草分け的な存在で,昭和50年代にゴチ網などで大量に獲れた小型のマダイを生簀で大きくする蓄養から始まったそうです。その後漁協が餌を一括して仕入れ,鮮やかな赤い色のタイを出荷する技術を確立し,魚の品質まで管理することで,日本一の養殖マダイ産地と称されたこともありました。しかしその後,愛媛県をはじめとした国内各地で大量にマダイが生産されるようになって価格が低下し,資金繰りが苦しい経営体は餌や人手が不足し品質低下し売れなくなって廃業する現象が進んだようです。それでもまだ,フィレなどの加工品ではなく丸魚をそのまま売る頃の習慣が抜けきれず,ある年良い値段で魚が売れて利益が出たら,翌年稚魚を沢山生簀に入れて生産し値崩れを招く出たとこ勝負の気質も残っているようでした。

それでも仮屋漁協はマダイで培ったチームワークを強みとし,近年は新規漁業者の受け入れもも積極的に行なっています。地産地消が重視されていますが地域人口は限られるので,素晴らしい段々畑など観光とタイアップした地域振興,すなわち『海業』の展開を視野に入れているようです。しかし,原子力発電所の作業員のために宿泊施設が貸切状態になっていたり,原発は補助金を通じて漁協を支えている面もありますが,いくつかのハードルを越えるためには新しい仕組みづくり(地域イノベーション)が必要のようです。