水産物と季節の行事の相性

節分の前日に近くの商店街を犬と散歩していたところ漬物屋さんの前に小さい赤い大根を見つけました。尋ねてみると,節分には鬼の爪のイメージをもつ『赤大根』の生酢をたべるのが長崎の伝統だそうです。赤大根は長崎市の一部で栽培されている地域野菜です。
▶︎ 紅(あか)だいこんの酢の物(全国学校栄養士協議会のウェブサイト)
https://www.zengakuei.or.jp/gyoji/nagasaki_2.html

その他,カナガシラという赤い魚も,ギョロ目で顔が骨ばっていて赤鬼に似ているので,節分ならではの食材です。普段は雑魚として練り物材料にしかならないのに,節分の時期は1尾200円以上の値段でスーパーの鮮魚コーナーに並びます。
▶︎ 金頭:カナガシラ(長崎魚市のウェブサイト)
https://www.nagasaki-uo.co.jp/kanagashira_page.htm

長崎にはこういう食文化が色々あります。お正月にはヒメジという赤い小魚を紅さし(べんさし)と呼んで珍重します。
▶︎ 地域食材活用レシピ:紅さし(長崎県のウェブサイト)
https://www.pref.nagasaki.jp/tisan/recipe/use/detail.php?id=54

 

こういう風に,普段は見向きもされない雑魚に,ある特定の季節だけ高値がついて,漁師さんがボーナス的な収入を得られるのは,旬の時期に沢山とれる水産資源の特性にマッチした素晴らしい使い方だと思います。買った消費者も季節感豊かな生活を楽しむことがでる点でも優れています。

先日,大阪の水産物流通会社のバイヤーの方に伺った話はこの真逆でした。水産食材に何より大切なのは『安定して供給できること』であり,一時的に入荷できないことがあると,不足部分を他の商材が埋め合わせるので失地回復は難しく,スポット商品としてしか取り扱われなくなり価格も下がるのだそうです。1年365日変化のない平準化された食生活は,自然からも人間からも豊かさを奪っていく気がします。