佐世保魚市

離島(平島)からの水産物の水揚げ経路と魚市場でのセリの状況を調べるため,佐世保に行ってきました。魚市場では朝3時頃から魚が入った発泡ケース(トロ箱)が産地別,魚の種類別に列を作って並べられます。平島から前日届いたヒラマサやアオリイカも並んでいました。4時半頃からセリが始まり,列の一番上手側(高い値段がつきそうな側)から順にセリ人が声をかけると,仲買人が手のひらの小さな黒板に買い値を書いて見せ,高い値をつけた人が落札する仕組みになっていました。

 

地域によっては仲買人が極端に少なく,実質一人の仲買人が値を下げて買い,その人から他の人が(少し価格を上乗せして)買い付ける形の“競らない”販売が定着している市場もあります。そういったところに比べると佐世保市場はまだ健全で,いわゆる「市場の価格形成機能」が働いています。ただ,佐世保市近郊の需要をまかなうだけの小規模な消費地市場なので,買い取れる魚の量が少なく,漁業者側から見ると「大量に水揚げするとすぐ値崩れする」困った面もあるようです。

 

しかし小規模で消費地が近いメリットもありそうです。あるスーパーは特定の仲買人と直接契約して購入を依頼し,落札した魚をすぐに市場裏の選別場で店舗ごとに仕分けして発送し,当日朝から販売する準備をしていました。昔ながらの市場のセリと直結した,この地域ならではの効率的な鮮魚販売システムが出来上がっているようです。

 

個人経営の魚屋さんは,仲買業者が買った魚が市場内で販売されているので,そこから魚を買って帰ってお店に並べます。お昼頃佐世保市中心部の戸尾市場に行ってみましたが,市場で見かけた人が見覚えのある魚を売っていました。戸尾市場には6〜7軒の魚屋さんが営業していて,それだけこの地域には鮮魚消費のニーズが残っていることがわかりました。

 

私が大学生だった頃は実家が佐世保市にあり,帰省すると母がウチワエビのフライとかアコヤガイ(真珠貝)の貝柱など,ちょっと変わった魚料理を作ってくれました。きっとこんな魚屋さんから買ってきたのだろうと思います。こういう食文化が消えることのない仕組みを作りたいものです。