ワシントン条約CoP19の模擬演習

毎年後期はじめの学生実験では「絶滅危惧種って何だ?」と題して,IUCNレッドリストについてプレゼンを行い,水産種の利用と保護に分かれて討論するディベート実習を行なっています。今年は11月にパナマで開かれる第19回ワシントン条約締約国会議の前哨戦として,CITES付属書掲載提案が提出されている水産種を対象に,掲載賛成と反対の2グループに分かれてディベートを行い,クラス全員で投票して可否を決める模擬演習を行いました。

 

実際に付属書掲載提案が提出されている水産種は,メジロザメ類,シュモクザメ類,淡水エイ類,サカタザメ類,ゼブラプレコ,バイカナマコ類で,このほかアホウドリのダウンリスティング提案もあります。実験ではメジロザメ類,ゼブラプレコ,バイカナマコ類についてディベートと投票を行いました。CITES掲載が密漁取り締まりに効果があるのか(むしろ逆効果ではないか),サメやナマコの類似種を本当に見分けられないのか,零細漁民への影響を考慮すべきではないか,など本番さながらの鋭い論点をめぐって議論が盛り上がりました。

 

投票結果は,

メジロザメ類 賛成16 反対15 採択

ゼブラプレコ 賛成 9 反対19 却下

バイカナマコ 賛成18 反対12 採択

となりました。結構良い線をついているかもしれません。11月末のCoPの結果を見るのが楽しみに思えます。

 

しかし,かつてクロマグロが付属書掲載されそうになり,日本が積極的にロビー活動を展開した頃のような勢いは,今の日本代表団にはなさそうです。世界の水産ビジネスにおいて日本が占めるウェイトが小さくなっていることを表しているのかもしれません。そういう目でみると,今回の水産種提案で直接的ダメージを受けるのは中国であり,中国vs西欧諸国という対立構図になっているようにも見えます。しかし,中国がCoPの中で積極的に反論する姿勢もそれほど見受けられないようです。成長著しい中国経済の中で水産業の占めるウェイトは小さいのかもしれません。