一歩先を行く水産会社

福岡市の(株)三陽という急成長中の水産会社でお話を伺ってきました。元々は福岡市鮮魚市場を拠点とする流通販売業から始まった会社ですが,近年は生産(漁獲・養殖)や加工にも力を入れていて,『魚を利用するエンドユーザー(鮮魚店や料理店や消費者)との距離を縮めて関係性を高めること』『加工度を上げて魚の価値を高めること』を重視しながら積極的に事業展開されています。

 

一例として本社ビル前はじめ市内各所に置かれた自動販売機では,『アジフライの聖地』長崎県松浦市で水揚げされ,加工してそのままパン粉をつけて作られた『ワンフローズン』(販売までの冷凍過程が1回だけの)アジフライが売られていて,1日3回商品補充しなければ間に合わないくらいの人気商品になっているそうです。従来は漁獲,3枚卸,フライ加工の各行程の後で冷凍して運搬され,最終的に食べるまでに2〜3回の冷凍・解凍過程を経るため,どうしても味の低下や加工・運搬コストの上昇が避けられませんでした。こちらの会社では産地に加工工場を作ることでワンフローズン化に成功し,商品価値と収益性を高めている訳です。

 

その他,資源の有効活用への意識も高く『大量に獲ったイワシをキロ10円以下で売ってミンチにするまき網漁業は持続可能ではない』という考えから『まき網でアジやサバを採ったら活魚として短期飼養して肉質を改善し,シケ等で天然魚が穫れない時期に出荷することで価格を高める』試みもなされているそうです。

 

魚の価値を高め,消費者のニーズをとらえて適材適時適所に販売していく企業の理念がはっきりと貫かれ実践されていることに感心しました。多くの漁協・漁連の加工・流通・販売活動はこのレベルに遠く及ばず,太刀打ちできない状況になっています。しかし,競争原理によって漁協が消失し企業だけが生き残る未来ではなく,漁協と企業がうまく連携することで水産資源と漁業者さんが健全な状態で続くことができるシステムを構築できないものか...と考えさせられました。