対馬の力

対馬の漁協や養殖業者さんを訪ねて話を伺ってきました。壱岐対馬といえばイカ漁というイメージだったのですが,漁協ごとに漁業の特徴や売り方の工夫が異なっていて,皆さん予想以上に頑張っていらっしゃいました。特に印象的だったのが美津島高浜漁協です。ここはもともと活き餌(イカ)を使った底延縄による高鮮度のタイ,ブリ,アマダイ漁獲を主体とした地域です。獲れた魚を福岡市場に送って売ってもらうのではなく,関東,関西はじめ全国各地の買い手の中から高く買ってくれるところを探し出し,トラックを仕立てて発送するところまで漁協がお世話することにより,漁業者さんたちの手取り収入向上に尽力されていました。このように優れた魚をそれに相応しい高値で売るのは漁協の理想的な役割ですが,高浜漁協では(IoTを使わず)長年に亘るヒト対ヒトの関係構築によってそれが実現されているのが素晴らしいと思いました。

 

近年全国的にタイは好漁,イカは不漁ですが,意外なことにタイは値崩れして儲からず,イカは漁獲量が少なくても値段が上がるので儲かる(ただし,最近の燃油高騰の打撃は大きい)そうです。延縄漁は魚の獲り方,売り方に経験と勘と技術がいることから,若い人は元々釣り餌であったイカを獲って売る比較的シンプルなイカ漁に力を入れているそうです。

 

また,上島と下島に囲まれた浅茅湾周辺は,湖のように波がなく,川のように流れが早く,養殖イカダが多数あっても水が澄んでいることに驚きました。ノルウェーのフィヨルドを連想させるリアス式海岸で,養殖適地という言葉がピッタリです。

 

宿泊は北対馬の佐護地区の廃校になった小中学校を地域のコミュニティースペース,カフェ,コンドミニアムにリフォームした施設を利用しました。オレンジと緑色を基調にしながら,あえて小学校の雰囲気も残すことで懐かしさも醸し出した面白い場所です:対馬地球大学さごんキッチン

 

周囲は自然豊かで,シシ,シカ,ヤマネコが頻繁に出没するようですが,田畑は比較的よく手入れされていました。朝の散歩で出会った90歳の女性は現役の農業者さんで『昨日雨が降ったからそろそろ野菜を植えようかしら』とシッカリお話されていました。

 

施設裏の田んぼの上に真っ白いツバメが2羽,他のツバメと一緒に蚊柱を追い飛び交っているのを発見して興奮しました。

 

対馬には豊かな地域資源とそれを活かす人の力が息づいているように思います。