令和の時代の水産資源評価

今年から水産庁と水産研究・教育機構の沿岸資源評価会議の一部に外部有識者として参加することになりました。漁業法改正によってMSYをベースとした資源管理に移行することを水産庁が高らかに宣言した訳ですが,私の参加する会議における対象魚種の多くは,年齢構成モデル(コホート解析,VPA)を適用できないデータ・プア種に該当します。単位漁獲努力量あたり漁獲量(CPUE)などの資源豊度指数の動向や,CPUEや漁獲量の高さに基づく資源水準の情報に基づいて資源の評価や管理を行うことになります。MSY計算するための情報は不足していますが,データ・リッチ種のシミュレーション結果に基づき,恐らくMSY管理に近い結果が得られると期待される指針に基づき許容漁獲量が算出され,それも広義の『MSYに基づく管理』と呼んでいるようです。

 

ここで評価結果を左右する重要な情報は資源豊度指数であり,それを算出するためのCPUE標準化手法です。その手法によってガラリと異なる傾向にもなり得るため,標準化モデルがどのような環境,生物,漁獲特性を想定し,得られた結果は漁業と資源のどのような時空間変動を表現しているのか解釈することが重要と感じました。

 

このようなMSYを目標とした資源管理を水産庁がトップダウンで推進していますが,実際の管理において重要なことは,水産資源と漁業の望ましい姿を目標として描き,それを達成するための管理の枠組みを構築すること,そのための議論を漁業者と管理者を始めとした利害関係者が十分に議論することです。むしろ科学者は,管理枠組みが目標を達成する上で適切なものであるかどうか検証しながら管理を科学的にサポートする中立的な役割に徹するべきだでしょう。いわゆるMSY管理を機械的に実施することよりも,管理目標と枠組み構築の議論を広く深く行うことが令和の水産資源管理・漁業管理を実りあるものにする上で重要であると思います。