干拓〜生物多様性〜有害駆除〜食肉調理

この時期恒例となったイノシシ実習に行ってきました。今年はアドバンスドコースとして乗用車2台で少人数のエクスカーションを行いました。まずは,諫早湾干拓地での観察です。堤防外の調整池の葦原でイノシシの足跡やカモ類,猛禽類を観察し,耕作地で農作物被害やカモ捕獲用の網を視察しました。干拓地には長崎県には珍しく広大な農地が広がっていますが,ツルやワシタカ類を含む多様な生物も生息し,人々がバードウォッチングや自転車スポーツを楽しむ場所となっています。しかし,かつて広大な干潟であった場所が農地となり,餌場がなくなったカモ類が農地のマメや野菜を食べるようになって『農作物被害』が拡大しているものの,カモ類の生息数は干潟だった頃に比べれば少ない筈だ...というお話は,この場所の複雑な状況を端的に表していました。

次に,ジビエ処理施設に移動し,捕獲されたヒドリガモの活け〆(止めサシ)を拝見しました。ちょうど昼食時にはカゴの中をひょこひょこ歩いていたつぶらな瞳のカモが,袋に入れられて命を絶たれるシーンの体験です。参加した学生さん達はまだ温かいカモの体を手にして,いろいろなことを感じ取ったことと思います。

最後はみんなでイノシシとカモを解体し,肉を切り分けて持ち帰りました。

 

干潟を干拓して人為的に作った農地周辺に新しい生態系ができ,食糧生産やレクリエーションの場であるとともに人と野生動物の軋轢も生じていること,そこで捕獲された“有害鳥獣”の生きている姿と命を絶たれる過程,その後解体して食材として“お肉”を取り出し,誰がどの肉を持ち帰ってどう料理するか我が事として捉えること...これらを自分の目や手や耳や嗅覚を通じてシームレスに実体験できる充実したトリップになりました。