日本漁業の危機的状況

我が国の漁業生産量が富士山のようなシルエットを示しながら1990年頃から減少している図は,水産白書などに良く示されています(下図左)。これに対する説明として,1980年代におけるマイワシの爆発的増加・急減による沖合漁業の漁獲量変動,1997年前後からの200海里制導入による遠洋漁業の縮小が挙げられています。しかし,この図を漁業種類別に描き直すと,我が国漁業の深刻な状況をより如実に表します。

上の右図は,海面漁業については1960年を1とした海面漁業各種の相対値,海面養殖業については1990年を1とした相対値を示しています。注目してほしいのは沿岸漁業で,1980年中頃から直線的な減少傾向を示し,ピーク時の約2分の1まで漁獲量が縮小しています。沖合漁業や遠洋漁業も,確かにマイワシの増減や遠洋漁場の拡大縮小を受けて上下動していますが,1990代半ばからは沿岸漁業と軌を一にした減少傾向を示しています。さらに養殖業も,1990年頃までは拡大していますが,2000年以降は減少に転じています。

このように,平成時代の30年間に我が国水産業は坂道を転げ落ちるように凋落の一途を辿ってきたのです。このまま進むと次の30年間で我が国漁業が産業として消滅してしまう可能性大です。水産白書にはこのような図を示し,我が国水産業の危機的状況を国会に報告し,国民に訴えるべきでしょう。2050脱炭素宣言するのであれば,それと同時に我が国水産業はどうあるべきか将来像を描き,それを実現するためのバックキャスト的な対策を打ち出していくことが必要です。