イセエビの売り方と買い方

西海市の大崎漁協とその崎戸支所を訪問し,イセエビの漁獲と販売流通に関して聞き取り調査をさせてもらいました。ここは県内トップのイセエビ漁獲量を誇るところです。以前漁協や漁業者さんに伺ったところでは

1)春の漁期に獲れるイセエビが蓄養中に死亡しやすく歩留まりが悪い

2)1kgを超える大型のイセエビは需要が少なく売りにくい

という問題があるというお話でした。しかし今回詳しくお話を伺うと,2つの問題が流通を介してつながっていることがわかりました。

秋漁期と異なり,春漁期,すなわち禁漁となる夏の産卵期より前,に漁獲されるイセエビの歩留まりが悪い問題は,依然として存在するようです。主漁場である平島の漁師さんが主に出荷する仲買漁業者さんは,春エビが死亡するリスクを覚悟した上で周年買い付けて,東京・大阪などに販売しているそうです。このようにして一般市場に流通させる場合,主力商品となるのは1匹500〜700gの比較的小型のエビ,料亭で一人1匹(もしくは半身)配膳するのに手頃な商品です。1kgを超えるような大型のエビは,1匹あたりの末端価格が1万円を超えるため需要が少なく,キロあたり単価は逆に安くなるそうです。仲買業者さんは,春エビの死亡のリスクや,大型のエビの売りにくさを全てひっくりまとめて請け負い,漁業者さんとの信頼関係を築いているようです。

一方漁協は,漁獲物の販売価格をできるだけ高く保って漁業者さんの収入を確保してもらうため,秋のイセエビ祭りを始めとした直接販売に力を入れ,一定の人気と固定客を確立しているようです。面白いことに,漁協の直接販売では1匹1kg以下のエビは人気がなく,1kg以上の大型エビの需要が大きいそうです。しかしイセエビの漁獲量は年々縮小し,特に大型のエビは手に入りにくく,以前は1ヶ月開催していたイセエビ祭りも最近は2週間で売り切ってしまう状態だそうです。

春エビの歩留まりの悪さを引き受けるリスクと,大型エビに付加価値をつけて販売するメリット,この二つの要因の分断を解決できれば,販売がスムーズに進み,漁業者への利益還元につながるだろうと思います。