書籍『日本の鰭脚類』

『日本の鰭脚類』という単行書が近々上梓されます。アザラシ,トド,オットセイなどの国内研究者の共著による本で,私は『海獣猟業と資源管理:キタオットセイ』という章を書き起こしました。毛皮を求めてオホーツク海やベーリング海が開拓され,ラッコの代替資源としてオットセイが乱獲された後,野生動物保護の教科書に載るような国際管理体制が作られたことは色々な本に記されています。しかし,色々調べてみると,オットセイをめぐる話題はそれにとどまらず色々な内容を含んでいます。

 

現在の200海里体制のさきがけとなる公海資源利用国と沿岸国の対立,単純なMSY管理の失敗,資源利用から動物保護へのパラダイムシフト,生態系をベースとした管理の導入など,オットセイの国際論争から,水産資源管理や生物多様性保全の先駆けとなる新しい概念や論点が次々に沸き起こってきたこと,そのような先駆的議論に対して日本政府は硬直した後手の対応に回ることが多かったことが,私自身この本の原稿を書いてみて良くわかりました。結構高価な本ですが,手に取る機会があったら目を通してみてください。