クロマグロを食べ続けられるようにするには?

NHKの動物ドキュメンタリー番組でクロマグロを紹介していました。体の大きさ,遊泳能力の高さ,体温保持機構などクロマグロの特徴を手堅くまとめた内容でしたが,最後のしめくくりに違和感を覚えました。

ダーウィンが来た!『大人気クロマグロの真相 さかなクンと解明!』

https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=200&date=2020-02-23&ch=21&eid=05075&f=175

 

『食べ過ぎていなくなるの?』(←インタビューに答えた子供の言葉)『今や絶滅危惧種となったクロマグロ。世界中の海で生態系の頂点に立つ生き物です。健全な海が保たれていなければ生きていけません。海の豊かさの象徴でもあるクロマグロ。これからもずっとマグロたちが生きていける海を残したいですね。』

 

クロマグロ資源が枯渇したのは,明らかに人間が捕って食べすぎたからです。それもヨコワやメジと呼ばれる小型の幼魚を大量に生け捕りして,生簀で飼育(蓄養)して太らせてから大量に市場へ供給し,刺身や寿司の食材として安価で大量に食べる生産・消費構造を作ってしまったからです。なのでクロマグロをこれからも食べ続けられるようにするためには,生態系の頂点捕食者を安価で大量に食べ尽くす習慣を改めることから始めるべきでしょう。

 

それに対して,突然『海の生態系の健全性』の話を持ち出して,問題点を曖昧にする論点のすり替えには納得できません。もちろん生態系の保全は重要な課題であり,クロマグロをめぐっては色々と難しい問題が漁業現場にも山積していますが,せっかく子供たちが『食べすぎていなくなるの?』とシンプルに問いかけているのですから,次の世代を賢い消費(ワイズユース)に導くような意識づけを行うことが大切です。