学生実験:水産資源の希少性評価

今年の3年生学生実験は『絶滅危惧種って何だ?』というテーマの下,日本周辺の水産資源の希少性評価にトライしてみました。水産庁が資源評価を行なっている魚種については水産庁が,それ以外(および国際機関が評価している魚種以外)については環境省がレッドリストを作って,絶滅危惧種であるかどうか確認しています。しかし水産庁のレッドリストは,評価を行なった94種のうち1種はデータ不足,93種はランク外という理解しにくい結果に終わっています。そこでこの学生実験では,なぜ『ランク外』という不思議な評価になるのか?,IUCN評価基準をそのまま当てはめるとどんな評価になるのか?二つの立場から検討を行いました。

まず最初にIUCNレッドリストから6種を取り上げて判定に使用したデータや基準の適用方法について学習しました。次に,近年資源減少が懸念されているホッケ,スルメイカ,トラフグの3種をとりあげ,魚種ごとに水産チーム(水産庁レッドリストに沿った検討)と環境チーム(IUCN基準をそのまま適用)に分かれて発表と討論を行い,最後にクラス全員で,どちらの意見に共感できるか投票しました。

結果は環境チームの2勝1敗。結局同じデータをどのように解釈するかの違いだけで,資源が減少していて,より効果的な資源管理・漁業管理が必要である,という意見は一致していました。議論の中からは,『漁獲上限を決めても,実際の漁獲量はそれを下回っている。なのに資源減少が止まらない。こんな資源管理はおかしい!』とか,『親魚資源量は減っていない』『それでも資源全体は減っている…ということは再生産が悪化するほど子供を取りすぎているのでは?』といった,過激な面白い意見も飛び出して来て驚きました。

 

後日談です。2敗した水産チームの学生さん達が「環境チームは “資源が減っているから希少種にすべき” と単純に主張するだけで良いので気楽なものだ!」と嘆きつつ落ち込んでいるという噂を聞きました。もし,保護と利用の板挟みになる『水産の仕事』の難しさまで感じ取ってくれたのだとしたら,この学生実験は予想以上の成功を収めたと言えるでしょう。