西海橋近くの漁協を巡って

大村湾と外海との出入り口に位置する西海橋の近くにある2つの漁協を回って来ました。最初に訪問した針尾漁協は,色々な小規模漁船漁業と養殖を主体とした漁協ですが,漁船漁業に携わる多くの方が,みかん農業との兼業である点が,長崎県内の他漁協とは異なる特徴でした。深く流れの速い砂礫底に住むアカマテガイを独自ブランド化し,価格を2.5倍に引き上げることに成功したそうです。しかし,漁場が限られ漁獲量も少ないため,ニーズに応えられない悩みを抱えているそうです。

一方,瀬川漁協は,地曳き網漁業を中心に据えるとてもユニークなところでした。漁協の目の前とその隣の入り江で,毎朝集魚灯を焚いてカタクチイワシを集め,地曳き網で巻いて漁獲しているそうです。獲ったカタクチイワシはそのまま生簀に入れて蓄養し,カツオ一本釣りの活き餌として販売されます(近年では水族館展示用のニーズもあるそうです)。

漁協前の岸壁には,2つのネットホーラーが備え付けられていました。早朝これを使って網を曳いて漁をする訳です。こんなに岸近い小さな入り江に,毎晩カタクチイワシが来遊して漁獲できる環境が整っていることに驚きました。しかも,この漁は明治時代から綿々と続いていて,漁協の方のお話では年変動はあるものの,長期的に魚が減っている傾向は感じられないそうです。自然の恵みを利用して長年にわたり漁が続いている一つの好例でしょう。しかし,この漁が成り立つためには,カツオ一本釣り漁も持続可能でなければなりません。

今までいくつかの漁協を回ってみて感じたことがあります。現在の漁業協同組合は生態系全体を見渡しながら漁業を運営する構造になっていないのではないか?という疑問です。昨年改正された漁業法は,漁業共同組合が漁場を保全管理することを求めています。入り会い状態で操業したり,移動性の資源を沖合と沿岸で漁獲している複数の漁協が,生態系を保全しながら資源を上手く使う視点を持ち,それを実践できる体制を作ること:これからの漁協再編には,生態系の視点を導入することが重要であると思います。