水産白書を読もう!

2月後半になり卒論発表やテストの季節も終わったので,授業とは別の形で「水産白書を読み解く会」というセミナーを開催しました。水産白書は日本と世界の水産業の現状と問題点と対策について解説された文書で,重要な情報を含むものですが,高校の社会科副読本のように平板な記述が続くため,読んでいてあまり楽しくなく,ついつい眠くなってしまいます。そこで,私が知っている背景情報を補いながら,図表や文章に込められた意図を説明することで学生諸君の水産業に関するリテラシーと理解を底上げしようというのがこの会の趣旨です。

3日間,毎日2時間のセミナーに,私が授業で接する機会があった水産学部の1年生と3年生を中心に約20名が集まってくれました。私が喋るばかりではつまらないので,クロマグロ,ナマコ,ホッケ,サケ,MPA,マリンエコラベル,WTO/TPPなどホットな?話題については,3年生にショートプレゼンテーションもやってもらいました。

全体に目を通してみると,やはり水産白書は日本の水産業の本質的な問題〜世界的に水産物消費は拡大し水産業は成長産業でビジネスチャンスがある筈なのに,日本では水産物を獲る人の数,獲れる魚の量,市民が魚を食べる量が軒並み縮小の一途をたどっていて,さらに国際市場競争にも乗り遅れている〜を如実に表していることがわかりました。この問題は根深く,平成29年度白書の特集が紹介しているIT技術の導入といった小手先の効率化で解決できるものではありません。学生さんたちがこのような日本水産業の根本的問題を認識した上で,大学でどのような研究に取り組み,水産業の改善に貢献するのか…そんな意識づけの契機になったら素晴らしいと思いました。