大村湾漁協

1年・3年の学生さんと一緒に,時津町の大村湾漁協を訪問しました。大村湾は北部の狭い水路だけで外海とつながる浅く穏やかな閉鎖水域という特徴があります。回遊性の魚は非常に少なく,湖のように生産力が限られる湾内の魚介類をいかに利用して持続的に漁業を営むか,とても興味深いところです。

 

この漁協の組合長さんは漁業の存続に関して強い危機意識をもち,積極的に活動を展開されています。大村湾はナマコが有名ですが,漁期は冬の2ヶ月に限定しているそうです。それ以外に獲れる魚介類の種類は多いけれども,まとまって獲れるものが少なく,一般的な水産物の流通ルートに乗せようとしても『雑魚』扱いされて低い価格にしかならない難しさがあるそうです。そこで,この漁協では産地卸売市場としての活動をやめた代わりに直販所を開設し,多様な魚を値崩れを防ぎながら売る工夫をこらしているそうです。

 

さらに,一般市民が魚を料理して食べる機会が減って魚が売れなくなっていること,漁業者の減少と高齢化が極度に進んでおり10年後には漁業者数が半減しかねないこと,など(この地域に限らない問題ですが)課題山積です。これに対し組合長さんは大局的な視点に立ち,まずは魚食を広めること,仕事としての漁業に関心を持って参入を考える人を一人でも増やすこと,といった底上げに取り組んでいます。また,漁協合併も積極的に進められていますが,これは漁業共同組合が自立して活動できる“体力”を得ることが目的だそうです。

 

魚食を広めるという点で,大学1年生が自主的に立ち上げたサークル「魚料理研究会」にも強い関心と共感を持っていただきました。大村湾には日本漁業が抱える問題の縮図があり,海域生態系の生産力や生物多様性に見合った漁業のありかたを考える点で,生態系をベースとした漁業管理の重要なケーススタディーの場となりそうです。これから漁協と大学の協力関係を築いていきたいと考えています。