鯨フォーラム

長崎県内で鯨フォーラムが開催されるという話を前日に聞き,海洋大教授で国際捕鯨委員会(IWC)総会議長を務めた森下丈二さんの基調講演を聞きに急遽出かけました。マスコミはIWCの結果について『日本の商業捕鯨再開提案が否決された』といった一通りの報道をするだけですが,講演を聞いてかなり深刻な問題に直面していることが理解できました。

『IWCにおいて商業捕鯨再開が認められない理由は,科学(鯨類を持続的に利用するために必要な科学的データが不足している訳ではない)でも法律(捕鯨が条約等によって完全に禁止されている行為ではない)でも管理(捕鯨の方法や数量を適切に管理できない訳ではない)でもない。IWCの中に捕鯨を行いたい国と絶対に行わせたくない国の両方がいて,両者の見解が根本的に相容れないことが問題の根源である。』このことをここ数年かけて浮き彫りにしてきたそうです。そして今年ついに,『見解が一致しない両者がIWCの一つ屋根の下で暮らすために,家の中に線を引いて不可侵・共存(同居離婚状態=保護と持続可能な利用のための分科会をそれぞれ作る)を目指したが,それも否決され,逆にIWCの役割は鯨類保護であることを示す提案が採択された。』『そこまで相容れないのならサッサと窓から飛び出すこともできるが,(マンション2階の)窓から飛び出した瞬間は気持ちよくても,すぐに地面に叩きつけられることになる』というのが森下さんの説明でした。

鯨類保護一辺倒であることが明確になったIWCを脱退することも考えるべき時がきているようですが,『日本国内で捕鯨議論が盛り上がらず,そもそも若い人は鯨食はおろか水産物にすら関心が薄いことも踏まえて判断する必要がある』といった,大学の先生目線のメッセージも添えられました。森下さんお気に入りの例え話を交えた一連の説明はとてもわかりやすく,色々と考えさせられました。