NPFCデータ会合

4週連続4国際会議(自称“地獄のシャトルラン”)の最終ラウンドは,中国の廈門で開かれた,北太平洋漁業委員会(NPFC)の脆弱な生態系と底魚のデータに関するワークショップです。脆弱な生態系の方は,今年3月に開いたワークショップの続きで,深海着底漁業が冷水性サンゴなどの脆弱な生態系(VME)に及ぼす影響をNPFC全体として統一的に解析・評価するために必要となるデータのウィッシュ・リストを作成することを目的としています。一方底魚の方は,奇妙な生活史を持ち,海の表層で3年ほど生活して体長30センチほどになって海山に着底する魚,クサカリツボダイの新しい順応的管理ルールを実施するために必要な情報の収集と伝達の手順を明確にすることが目的です。クサカリツボダイは加入量変動がきわめて大きく,多い年は3万トン以上,少ない年は1000トン以下しか加入がなく,産卵前に大部分の魚を取り尽くしていた状態でした。それを改善するために考案されたルールは,漁業を行いながら加入量のモニタリング調査を行い,加入が少ない年は700トンの漁獲上限とし,加入が大きいと判断されたら漁獲枠を12000トンに拡大する代わり,漁場は全体の半分に縮小する,というものです。魚が沢山いたら漁獲枠を拡大するのは普通のやり方ですが,それと同時に漁場を半分にするのはとてもユニークな発想です。漁場を縮小することによて,確実に加入魚の約半分を海に残し,させるのがこのルールの目的です。

 

私は共同議長として,主に底魚部分の議事進行を担当しました。このルールは夏の委員会会合で議論され,急いで作文されたため,科学的な検討が不十分であり,定義が曖昧で実施要領が不明確な箇所が沢山ありました。そういった不明点をこの会議で指摘し,関係国と事務局が後日話し合った上で,実施前に各国にやり方を説明することを求めました。この画期的なルールがなし崩し的に終わることなく,成功への道をたどることを祈っています。

 

会議が開かれたのは廈門の中心部から少し離れた,集合住宅と個人商店が立ち並ぶ地域でした。食事はホテル周辺の小さな食堂で済ますことが多く,英語も日本語も通じなかったのですが,逆に中国の人たちが慎ましく暮らしていて,とても親切であることを感じることができました。