漁師町の送り火

長崎の8月15日の夜といえば精霊流しが有名ですが,この行事は長崎市内だけでなく,県内各地で行われます。今年は墓参のあと長崎半島東側の付け根にある茂木漁港を訪れました。

ここは橘湾(千々石湾)に面した良港で,かつては小型底曳き網が盛んなところでした(私も小学生の頃,夏休みの昆虫採集ならぬ甲殻類採集としてカラッパやヒシガニやアシナガツノガニを拾いに来た思い出があります)。しかし今では一網あたり獲れるものもわずかで,底曳き操業する船も減っており,船だまりで見かけたのは一本釣り(手釣り)のような小型船が主でした。
ここでの精霊流しは,長崎市内のショーアップされたものに比べると船は小型で質素ですが,爆竹の量が半端なく,勇猛果敢な若者たちが町を何周もしながら,時には精霊船をぐるぐる回し,また時には(しばしば?)段ボール箱一杯分の爆竹に一気に火をつけてすざまじい轟音を発しながら,故人の霊を送り出します(下の動画なんか,物凄い迫力です)。
思ったのですが,長年漁師として活躍されてきた方の魂を船に乗せて西方浄土に送り出すとなれば,その方の人生の縮図そしてこの世からの最後の船出の象徴として,ひときわ強い想いが親族・知人から精霊船へ寄せられるに違いありません。精霊船をかつぐ活気あふれる若者の中から,次世代の漁業を担う人が現れ,この地域と文化を支えていくようになって欲しいものだと改めて感じました。