資源評価の仕事振り

長崎市内で開催された資源評価会議西海ブロックを傍聴してきました。いままで私は沿岸資源の評価・管理に直接接する機会が少なかったので,管理のための資源解析がどのように進められているか,良い勉強になりました。年齢別漁獲データが揃っていればコホート解析(VPA必要に応じてCPUEなどの資源豊度指標によりチューニング)を行い,資源量(水準)と増減傾向(動向)に応じて管理方策と許容漁獲量(ABC)を導出し,将来予測により効果を確認する;詳しいデータが利用できなければ豊度指標の経年変化から資源の水準・動向を判断し近年の平均漁獲量に安全係数を乗じてABC計算する,といった感じで資源評価の手順はかなり定式化されていていました。もちろんデータの準備や解析テクニックにはケースバイケースで細かい工夫がなされています。例えば,日本の操業が経年的に縮小している東シナ海の底魚漁業では,空間自己相関モデルを用いて補完しながらCPUEを標準化するのがちょっとしたブームのようでした。一方まき網のCPUEは標準化されることないまま一網あたり,一隻あたりといった値がバラバラに使われている状況で,少々不思議な感じがしました。

 

興味深い例としては,近隣国の年間漁獲量が80万トン前後で,我が国の漁獲の影響は非常に小さいとしながら800トン前後のABCが算出される東シナ海のタチウオや,寿命が2050年以上と長く成熟が遅い深海性フエダイ類について,毎年の資源豊度指標からABCを算出しつつ,資源回復のために別途設定された保護区が解放された途端に漁獲が集中してしまった例などがありました。定型的にABCを算出する仕事とは別に,その資源をどのように管理するか,出口管理がその管理目的に適しているのか,といったポリシーに関する議論をオープンに行うことも大切であるように思われました。