鰭脚類

鰭脚類(ききゃくるい,ひれあしるい)は,水中での生活に適応し,足がひれ状になった哺乳類です。アシカ,オットセイ,トド,アザラシ,セイウチ… 水族館では良く聞く名前ですが,どれがどれなのか,どこが違うのか,学校の授業ではこうした生物の特徴や進化的な背景についてあまり教えてくれません。ここで簡単にご紹介しましょう。


アザラシ Seal

アザラシ(英語では一般にseal)は,陸上よりも水中での生活に良く適応しています。

体は魚雷形をしていて,後足を魚のように左右に振って泳ぎます。魚やイカ,タコなどをつかまえて食べます。陸上で動き回るのは苦手で,イモ虫のように這って移動します。

厚い皮下脂肪で体温を保つので,毛皮はゴワゴワした荒い硬毛しかありません。

陸上では腹ばいなので,水族館で派手なショーをすることはありませんが,ボールをキャッチしたり,モジモジしてみせたり,ジンワリ心温まるショーをすることはあります。ちなみに耳は穴が空いているだけです。耳の形でもアシカ・オットセイ類と見分けられます。あまり陸上で鳴き声を発することはありません。(写真提供は伊豆・三津シーパラダイス)


セイウチ Walrus

セイウチは独特の顔と大きな牙で一目瞭然です。体の特徴はちょうどアザラシとアシカの中間で,陸上での姿はアシカ的,水中での体の使い方はアザラシ的です。海底付近をゆっくり泳ぎ,ナマコや貝などの底生動物を探し出して食べます。口の周りのヒゲや牙は,海底にひそむ生物を探し出して食べるのに役立つと言われています。

熱い皮下脂肪を持つため,毛皮は硬毛だけですが,大きなおとなになるとほとんど毛はなくなります。耳は穴が空いているだけです。(写真提供は伊豆・三津シーパラダイス)


アシカ,トド,オタリア,オットセイ Sea lion and Fur seal

英語でSea lionと総称されるアシカ科の動物です。前足と胸筋が良く発達していて,水中では鳥のように羽ばたいて泳ぎ,魚やイカなどをつかまえて食べます。陸上では後足を前向きに折りたたんで地面に着き,お座りしたり歩いたりできます。

 

このうち,毛皮に密な下毛(綿毛)を持つのがオットセイ(英語でfur seal,毛皮をもつシールの意;写真),硬毛しか持たないのがアシカです。アシカのうち大型のものをトド(北太平洋),オタリア(南米)と呼びます。水族館で片手倒立や拍手など派手なショーを見せてくれるのは,陸上での動きがシャープなアシカやオタリアです。

小指の先くらいの外耳殻が,耳のところに飛び出していることでも,アシカ・オットセイの仲間はアザラシやセイウチと区別できます。

ちなみに,「アウッアウッ」と鳴くのはアシカです(オットセイではありません)。オットセイは日本人の耳に馴染んだ呼び名ですが,一般の方が見かける機会は少なく,なぜかしら誤解されることが多い動物です。